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トンネルの天井板脱落事故について

考えてみました

天井板を吊っていたアンカーが抜けた

ことが直接の原因と報じられています

そこで出てきた「ケミカルアンカー」

建築関係以外の方は

初めてお聞きになったと思いますが

要するに強力な接着剤

ガラスのアンプルのような形をしていて

中に樹脂と骨材とガラス管に入った硬化剤が入っています

ガラス管は2重になっている訳です

使い方ですが

コンクリートにドリルで穴をあけて

これを穴の中に入れます

そこに鉄筋やボルトをたたき込んだり

ねじ込んだりすると

ガラス管が割れて樹脂と硬化剤が混ざります

試験やデータでは

かなりの強度がでます

一枚約1トンの天井板を

35年も吊ってきたのだから相当なものです

打音検査をしていなかった事も問題ですが

検査をしていても事故は防げなかったかもしれません

徐々に緩んでくるようなねじとは違って

ある日突然抜け落ちるかもしれないからです

これは設計に問題があったと思います

数値や計算だけに頼るのはとても危険です

特に時間や環境に大きな影響を受ける

建築や工作物の場合なおさらです

高速道路の振動って

結構すごいですよね

首都高速なんか

車から降りて道路上に立っていると

恐ろしいくらい揺れ続けています

いずれ構造的な事故があると思っています

コンクリートに穴をあけて

接着剤で固定したボルトで何百トンという天井を

振動を受けながら35年もたせる・・・

いくら計算上OKでも

そんな恐ろしい方法は採用しないのが

設計者としての正しい判断だったのではないでしょうか

ボルトを最初からコンクリートに埋め込んでおく・・・

梁を架けて天井板をその上に載せる・・・

天井板の中央部を高く拝むような形にして

力を両端に逃がす・・・など

他にも方法はあったのではないでしょうか

もちろんケミカルアンカーには何の問題もありません

すぐれた材料ですし

われわれも使うことがあります

ただし使用条件や使用箇所は十分検討するべきでしょう

設計をするときに

人間の感覚というのは大切です

大工さんがもつ(耐えられる)もたない

という時には強度だけでなく耐久性、条件、余裕(安全率)

などを経験や感覚で判断しているように思えます

地盤調査が一般的でない時代に

基礎の根伐底まで掘ると

地盤を観察して

そこでとび跳ねたりして

「うん、大丈夫」という鳶の親方がいましたが

苦笑しながらも何故か信用していました

デザインだけでなく

材料や工法の適切な選択は設計の大切な仕事です