住宅設計と聞くと、間取りや外観のデザインを思い浮かべる方が多いと思います。

ですが、実際に家づくりに携わっていると、それだけでは語れない部分が数多くあると感じます。
今回のブログでは、住宅設計において私たちが大切にしている考え方について書いてみたいと思います。

家づくりでは、断熱・気密・耐震といった「性能(機能的価値)」と、光の入り方や軒の陰影といった「感覚的な心地よさ(情緒的価値)」の両方が求められます。どちらか一方だけを重視するのではなく、高い性能を確保した上で、情緒的に感じられる部分をいかに取り入れていくかが重要だと考えています。

例えば、高断熱を売りにしている某ハウスメーカーで、窓がほとんど無い、いかにも真っ暗なリビングの間取りがありました。確かに窓を少なくすればするほど、断熱性能(外皮性能)は上がります。とはいえ、真っ暗なリビングでいつも車のお尻を眺めて過ごす、カーテンを閉じたままの空間は、全然心地よくありません。

ノモトホームズの家づくりにおいて、性能については、Ua値0.34以下を標準として設定し、許容応力度計算を全棟で実施しています。これらは感覚ではなく、具体的な数値として確認できる部分です。一方で、深い軒や土間、格子や障子といった「和」のデザインは、流行に左右されない合理的な要素として位置づけています。

設計の中で繰り返し重視しているのが「中間領域」という考え方です。
中間領域とは、土間や土庇のように、家の内と外の境界に位置する空間のことを指します。建築とは、内と外、光と影、木と漆喰など、何かと何かの間の関係を考え、デザインすることだと捉えています。
大開口やウッドデッキ、土間を通じて外とつながる住まいは、庭とセットで初めて良い建物になるという考え方にもつながっています。アプローチも、外と内をつなぐ大切な空間として設計しています。

設計の理論的な拠り所のひとつに、建築家クリストファー・アレグザンダーの『パタン・ランゲージ』(1977年、邦訳1984年)があります。253のパターンの中から、守りの屋根、屋内の陽光、短い廊下、禅窓、どの部屋も2面採光といった考え方を、実際の設計に取り入れています。軒の落ち着きや視線の抜けといった感覚は、こうした理論の裏付けがあるものです。

設計とは、「選択」の連続で、これが毎回悩ましいところでもあり、楽しいところです。それらの判断においては、どちらが合理的かを考え、必ず決定根拠を持って決めていくことを心がけています。
例えば基礎については、ベタ基礎と布基礎のどちらか一方が優れているということはなく、床下エアコンを採用するかどうかという具体的な条件で使い分けています。
断熱についても、性能はもちろん、施工性やコストとのバランス、気候変動や夏型結露(逆転結露)を考え、効果の高い西面などに絞って付加断熱を採用する判断をすることもあります。
過剰な性能を追求するのではなく、必要な性能とコストのバランスを、具体的な数字で説明できる状態にしておくことが大切だと考えています。

住宅の本質は、普遍的な意匠、構造や材料の力強さ、自然環境や地域性を考慮した謙虚さ、そして空間の豊かさや素材の美しさにあると考えています。

性能という土台の上に、情緒的な心地よさをどう重ねていくか。この両立こそが、住宅設計において最も大切にしていることです。

竹村 泰彦

竹村 泰彦

YASUHIKO TAKEMURA

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