
私たちが住宅を設計する時は、いつも天井の高さにこだわります。玄関、リビング、ダイニング、トイレ、脱衣室、浴室・・・それぞれの部屋の用途やそこでの人の所作、居方に応じて、適切な天井高さを決めていきます。
実は設計も施工も一番簡単なのは、どの部屋も天井の高さを一律2.4mにすること。これは本当に楽です。
展開図を描かなくても平面図だけで施工できるくらい、現場での間違いやイレギュラーな問題が起きにくく、効率よく住宅を量産する場合にはもってこい。建材にも8尺(2424㎜)という規格寸法のものがあるので、それを使えばパタパタと簡単につくれてしまいます。
施工と同じく見積も楽です。どの部屋も高さ2.4mで考えれば良いので、数量を拾ったりする計算が楽です。
しかしながら私たちは、そのような楽な道は進まず、前述のようにあちこちの部屋で天井高を変えるという、あえていばらの道を進みます笑

学生時代から読んでいる『パタン・ランゲージ』という書籍は、私が生まれた2日前の1984年12月5日に出版された本で(ニアミス!)、研究者は全員読んでいるであとうというくらいの学術書であり名著です。設計者も必読のバイブルといっても過言ではないのですが、この本にはこう書かれています。
「すべての天井高を同じにすると,事実上,居心地のよい建物にはならない。」
―『パタン・ランゲージ』 P.463 「190 天井高の変化」より引用
これには本当に激しく同意なのですが、例えば落ち着きの欲しいリビングは天井高さをぐっと抑えるべきですし、ラグジュアリー感や格式高さを演出したい場合は天井高さを高くしても良いです。
三畳のこぢんまりした畳コーナーの天井が2.4mもあると座位の姿勢では井戸の底にいるように思えます。動きの多いダイニングは吹抜にして、より動的に、ダイナミックな空間にしても良いです。
『パタン・ランゲージ』には、標準化や規格品、建材によって一律に天井高が決められてしまう今の建物に対し、こうも書かれています。
「さらに高さの変化がもたらす重要な心理的効果も忘れてしまい、人びとは甘んじてそのままにしているのである。」
―『パタン・ランゲージ』 P.464 「190 天井高の変化」より引用
つまりは天井高さの変化は心理的な効果も生み、それは住まう人の暮らしをより豊かなものへと昇華させてくれるのですが、人は考えたり悩むことをやめてしまっているのです。
天井高は、隣接する部屋と部屋の相対的な変化をどうつくるか、そこでの人の所作や居方、人と人との親密度をどうするか、社会的距離などなど、様々な要素から決定されるべきです。
経済的理由や作り手側の都合、そもそも設計者が何も考えていない(知らない)ということで一律の天井高さになってしまうのはとても残念に思います。
私たちはよく天井高さを2.1~2.35mにするのですが『パタン・ランゲージ』にも2.1~2.3mの部屋は素晴らしくなると書かれています。設計時に何かの寸法を決める場合は、必ず根拠を持って設計するようにしています。その一つに『パタン・ランゲージ』があります。
たかが天井高さですが、されど天井高さです。建築好きが集まる工務店としては、一棟一棟丁寧に、設計を考えていきたいものです。